姫油薄・清澄白山菊・石垣屋久島菫・弟切草 2019年秋(夏に制作) |
9月2日で山野草の盆栽教室 睦草は5周年を迎えることができました。
振り返るとこの5年間は、あっという間であったような、いろいろなことがあったような不思議な時間です。
IT企業に勤めて、そろそろ役職定年後のことを考えなければいけないなとおぼろげに感じていた、50歳前後。「自分はITよりも、植物、自然、古いものの方が好き、もっとそちらを究めたい。そして、小さな自然と暮らす楽しさを他の人にも伝えたい。」人と話をする中でふと思いました。
セカンドキャリアを考えるにあたり、ITの仕事ではなく、自分の興味のあることをとことんやってみるのもありなのではいか、そんなことを思ったのが今思えば睦草の始まりのきっかけです。
最初のチャレンジは、山野草盆栽の写真をアップするInstagramを始めること、友達向けのワークショップを週末にやってみること。石橋を叩いて割ってしまうくらい慎重な私にとって、どちらもとても勇気のいることでした。
それでも、最初の一歩を踏み出せば、「今まで全く面識のなかった人と新たにつながることの面白さ」を経験することができ、「自分は何が楽しくて、何が嫌か」という新しい発見がありました。その小さなチャレンジが、自分で自分の働く場を作り、企業で働くのとは違う楽しさや難しさを味わうというのもよいのではという考えにつながります。長年働いていた会社を思い切って辞め、睦草を立ち上げたのがちょうど5年前の今日。
山野草盆栽は、最初に鉢に植えたところがスタートで、その後、長く育てていくなかで、時間や自然環境、偶然の出来事を味方にしながら、作品にしていきます。
この睦草の教室も、同じだなと思います。Instagramで盆栽の鉢作家の陶芸の先生に出会い、雑木と山野草の寄せ植えの勉強会を紹介していただき、展示会で飾るという機会をいただく。その偶然のような必然のようなことの積み重ねで、私の知識や技術や経験、人とのつながりがどんどん増えていく。それを他の皆様に伝える場として睦草の教室が存在し、その活動の幅が広がっていく。いい循環を作るのが、自分で事業をするということなのではないかなと、最近感じています。
このいい循環をつくれたのは、本当に多くの人が力になってくれたおかげです。盆栽の先生、陶芸の先生をはじめ、勉強会や展示会の先輩方、山野草の苗や苔、鉢の仕入先のみなさま、多くの方が、私の営みを理解してくれ、サポートしてくださいました。そして、何よりも、この教室に通ってくださる、生徒のみなさま。生徒のみなさまの笑顔や、山野草の盆栽に対する興味や熱意がこの循環を動かす大きな原動力になっています。
みなさま、本当にありがとうございます。
睦草が、山野草の盆栽の作品と同様、年を経るごとに魅力的な場になっていけるよう、引き続き、力を尽くしてまいります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
冒頭写真の5年後の姿 姫油薄・清澄白山菊・弟切草・竜胆・夕化粧 地縛り・犬香需・姫莎草・小鮒草 |
2024年9月2日
東京 狛江 山野草の盆栽教室 岩下 由紀子