2024年春 模擬展示会&交流会

  5月19日に4回目となる睦草 模擬展示会&交流会を開催しました。
春としては、2回目の模擬展示会ですが、去年は4月開催でしたので、全く違う景色ができあがりました。


■撮影準備&撮影会
 飾るスペースは、時代箪笥の上や、テーブル。作品の数や大きさによって飾る場所は変わります。大きな作品の席飾りでは広いところを、逆に少ない点数や小さな作品の席飾りは小さめのところを選び、まずは、自分で飾ってみます。布や敷板で雰囲気は全く変わってきます。台に載せると高低差ができ、立体的な景色が作れます。事前に家で組み合わせを考えていただくのですが、飾る現場でしかわからないこともあります。小さい鉢や陶板などは、いくつか持ってきていただいて、その場に置いて全体の調和を見ることが大切です。

 実際にいろいろなパターンで置いてみると、しっくりくるもの、ちょっと違和感を覚えるものがなんとなくわかってきます。正解があるわけではないので、まずは飾ってみることをやってみます。
 そのあと、迷うところなどを、一緒に吟味していきます。小さい鉢はどれがいいのか、ここの草は残した方がいいのか、切った方がよいのか。一番見てもらいたいポイントが一番素敵に見えるように、葉や花の数も調整してきます。配置によってもずいぶん印象が変わります。お互いにちょっと気になるところを伝えあって、最終的には、自分でどうするか決めます。
 他の人の作品を吟味する過程を一緒に見たり聞いたりすることも、とても勉強になります。

 作品の最終調整が終わったら、本番です。順番に展示者が席飾りを構成する作品の詳細や選んだ背景などを説明します。どんな景色を作りたかったのか、この季節ならではの作品の見どころは何かなど、いろいろな背景や苦労も含めてお話を聴けるのがとても楽しく、ためになる時間。いろいろな質問も飛び交います。新たな草木を知ることができるのも展示会ならではの醍醐味です。その後、皆で作品の写真を撮影をして、次の席飾りに移ります。


■展示作品
 作品名は左から
   写真をクリックすると拡大してご覧いただけます。

江川 真理子

コナラ・イヌトウバナ(大竹慎一郎さんの鉢・自作陶盤)
ヘビイチゴ(自作陶盤)
ノギク・リンドウ・コバノタツナミソウ(大竹慎一郎さんの鉢・自作陶盤)


コナラの葉


ヘビイチゴ


ノギク・リンドウ・コバノタツナミソウ・タチツボスミレ


 今回は、初めての枝ものの席飾りに挑戦。昨年秋に作った実生のコナラの草木盆栽をメインに、高尾山の麓の景色をイメージして作りました。伸びやかに生長したコナラは、長さ90cm近くあり、新芽の明るい緑が鮮やかです。高尾で見られたニリンソウを合わせたかったそうですが、ちょっと前に花が終わってしまったとのこと。代わりに、昨年の秋の展示会でも飾ったノギクとリンドウの鉢。緑いっぱいの鉢は秋とは打って変わってこの季節ならではの景色です。アクセントに置いたヘビイチゴの鉢が、長いランナーと赤い実でやさしさと彩りを添えてくれました。


橋本 和江

ホトトギス青藤・ノギク・タチツボスミレ(遠藤正樹さんの鉢)
ハンゲショウ(自作陶盤)
ドウダンツツジ


ホトトギス青藤・ノギク・タチツボスミレ


ハンゲショウ


ドウダンツツジ


 今回、初めての参加。最初は見学をとのご希望だったのですが、せっかくの機会なので飾ることにも挑戦していただきました。教室で作ったホトトギスの鉢に、自分で作った苔玉二つを組み合わせた席飾り。ドウダンツツジの流れるような枝ぶりが台に載せることでよくわかるようになりました。教室では、樹木で苔玉を作りますが、草で作ったハンゲショウの苔玉も少しいびつな球形で自然風。一緒に添えたカエルも、いい仕事をしてくれています。古くから家にあったカエルとのこと。古いものの持つ、いい味わいが出ています。緑の葉と苔でしっとりとした風景が浮かび上がり、これから蒸し暑くなる季節にも飾りたい景色です。



岩下 由紀子
メイゲツソウ・矮性ノガリヤス・アシズリノジギク (自作陶盤)
アキグミ・ヤクシマツルキンバイ・草 (自作鉢・自作陶盤)
コハリスゲ・スミレ・ヤエヤマスズコウジュ (自作陶盤)


アキグミの枝・葉


メイゲツソウ・矮性ノガリヤス・アシズリノジギク


コハリスゲ・スミレ・ヤエヤマスズコウジュ


 アキグミの柔らかな枝ぶりと輝くような葉をメインに、緑あふれるこの季節の席としました。このアキグミは、先輩が剪定したアキグミの小さな枝を挿し木したもの。3年ほどたって、樹形ができてきたので、鉢に入れてさらに2年半。下からカーブして出てくる優しい感じの枝を大切にしています。時間をかけて自分で作った素材が景色になっていくのを見るのは、格別です。アキグミに合わせたヤクシマツルキンバイが少し前に終わってしまったので、赤い葉の綺麗なメイゲツソウを彩りに。小さな鉢のヤエヤマスズコウジュが今回唯一の花。小さく咲いています。


岩淵 幸子

ヤクシマザサ(自作鉢・自作陶盤)
ハマボウ・アシズリノジギク・イブキジャコウソウ(自作鉢・自作陶盤)


イブキジャコウソウの花


アシズリノジギクの葉


ヤクシマザサ


 昨年の秋に作ったハマボウの草木盆栽をメインに2点飾りで構成。ハマボウの草木盆栽は、海岸に生える植物の寄せ植えなので、海辺の景色を作りました。ちょうどタイミングよくイブキジャコウソウも咲いてくれ、彩りと素敵な香りを漂わせています。添えにしたのは、小さなヤクシマザサ。岩場を思わせる自作の鉢に、そこに生えていそうな形の草の取り合わせ。水を思わせる自作の小さな陶盤も景色づくりに貢献しています。
 ハマボウは秋の紅葉も美しい樹木。アシズリノジギクの紅葉と相まって、素敵な景色になりそうです。


中野 優希

ヒメサルスベリ
ヒメユキノシタ
ツクシカラマツ


ヒメサルスベリ


ヒメユキノシタ・ツクシカラマツ


 こちらも今回初めての参加。見学をご希望でしたが、最近、盆栽熱が高まり、この春ご自分で作った作品を持ってきてくれました。急遽、その場で作った三点飾り。小さな鉢に合う低めの台を他の生徒さんが貸してくださり、立体的な景色になりました。平面に配置していたときは、単調な感じでしたが、いざ、台にのせると、途端に印象が変わります。
 ヒメの名の付く小さな草木が、手作りならではのやさしいラインの鉢に入り、全体的にかわいらしい席となりました。それぞれ、持ち込むことによりどんな景色になっていくのか、楽しみです。
 


片倉 桃子

台湾バイカカラマツ・スズメノヤリ
チシマタンポポ
チャルメルソウ・シダ

台湾バイカカラマツ・スズメノヤリ


チシマタンポポ


チャルメルソウ・シダ(阿部三有紀さんの鉢・自作陶盤)

  
 こちらは、ちょうどよく咲いてくれたチャルメルソウをメインに考えた席飾り。チャルメルソウの花は地味ですが、チャルメラの形をした趣のある花。メタリックの釉薬をかけた浅鉢に渋い葉色のチャルメルソウと緑あふれるシダが静かで落ち着いた景色を作ります。一方、台湾バイカカラマツのかわいい花殻がスズメノヤリの穂と一緒に春の終わりののどかな一コマを思わせます。ちょうどその日の朝につぼみを開いたというチシマタンポポが彩りのアクセントになりました。林の中の陽だまり、木漏れ日の下、木陰を思わせる、穏やかな席飾りになりました。



■交流会
 撮影会の後は、紅茶やコーヒーを入れて焼き菓子とともに懇親会。今回は、飾る前の準備に時間をたっぷりかけたので、交流会の時間は短くなりましたが、それでも、植物に囲まれてのティータイムは格別です。

 今回も、皆様のおかげでこの季節ならではの瑞々しい景色が作れました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

 参加した皆様から「次回はこんな景色が作りたいと欲が出てきた」「この場に飾るといつもと違ってしっくり馴染む」「席飾りに加え、普段の育て方の情報交換ができてよかった」「『飾る』『見せる』ということを勉強できた」との嬉しい言葉をいただきました。

 秋もまた企画したいと思っております。飾ることは、盆栽の学びの一要素。経験するたびに、自分の引き出しが増えていきます。そしてその学びは、普段の飾りにも生かせます。ぜひ、みなさまもご都合つきましたら、ご参加ください。